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  • 執筆者の写真長緒 鬼無里

【一日一話】「ラスト・シャーマン」最終章 第三話 重なる運命

 最近、皇后との間に、彼にとって二人目の子である皇子が生まれたとの報告も受けていた。  間もなく五つになる月世(つくよ)も、可愛い盛りだろう。  壹与は彼らと会える日を思い、久々に心を躍らせた。  それと同時に、とうとう女王の職務からも解放されるのだと思うと、安堵と不安の入り交じった複雑な感情が彼女の胸中を覆った。

(これから私は、何者になるんだろう)

 大きなため息をつきながら、壹与は心の中でそうつぶやいた。 第三話 重なる運命

(注)今回の妄想は長いです。 以前にも少しお話しましたが、最近私は弥生時代の倭国は、大陸により政治だけでなく文化的にもかなり制圧されていたとの思いを強くしています。 その最大の理由が、縄文時代に比べて土器やその他の遺物のデザインがシンプルになること。 最初は「ユニクロ化」と勝手に名付けて、弥生時代にシンプルなデザインを好む波がやってきたか、もしくは戦乱の時代になり、デザインに凝る余裕がなくなったのかとも思ったのですが、縄文の優れたデザインを見るにつけ、それだけでは説明がつかないような気がしてきました。 土偶や火焔土器などは、宗教色が濃厚そうですので、弥生時代に新たな宗教が伝来してきて姿を消したとも考えられますが、凝ったデザインの耳飾りや色鮮やかな漆器など、身を飾るものや生活用品に至るまで色味を感じさせるものが見られなくなるのは、少し不自然な気がします。 ふと、そのような目で「魏志倭人伝」を読み返してみると、そこに書かれている倭人の様子にも、悪意が感じられてきたりします。 「倭人は見栄っ張りで、自分のことをみんな大夫(貴族)だという」 「倭人の男は顔に刺青をしている」←中国には顔に刺青をする刑があった 「服は縫ったりせず、細長い布を巻いているだけで、裸足で歩いている」 などなど。 だいたい、「倭人」とは「チビ」という意味のようですし、女王に「卑」という文字を当てるなど、どう見ても倭人を見下しています。 その一方で、「蚕から上質の絹製品を作っている」とか、「倭人は盗みや言い争いはしない」とあったりと、上記の内容と若干ちぐはぐな部分も見受けられます。 もちろん、職種や立場により身なりや生活レベルなどは変わってくるでしょうし、人格にも個人差があるでしょうけれど、なんとも言えない違和感が付きまといます。 所詮、「魏志倭人伝」は中国で書かれたものなので、おそらく自分たちに都合のいいように記されていると考えて間違いないでしょう。 最近、古代中国に詳しい方に伺ったところ、中国には東を敬う思想があったそうで、以前私が疑問に思っていた着物の襟合わせもそれに基づくものなのだそうです。 これに関しても「倭人は死装束の襟合わせをしていてびっくりした」との記述があったと記憶しています。 東を敬うのであれば、極東にある倭国はその最たるものであるはず。 けれど、そこに住む人々が自分たちより何百年も遅れた生活をしていたとしたら……。 東を敬うという思想が揺らぐ事態になりかねないと、当時の中国の権力者たちが思ったとは考えられないでしょうか。 もしそうであるなら、「邪馬台国論争」の火種である邪馬台国までの経路のいい加減さも、あるいは意図的であったようにも思えます。 「東……というより、あー行って、こー行ったどっちかというと南の方に、倭っていう蛮族が住む小さな島があってさ」 「そこの卑弥呼っていう年増な女王が、奴隷を送ってご機嫌うかがいしてきたよ」 ……という感じ? 反面、「極東に住むこいつらは、もしかしたらすごい力を秘めているかもしれない」と、倭人に潜在的に恐怖を感じていた可能性もあります。 そのため、定住することで民の管理がしやすくなる稲作を浸透させ、反逆できないように文化的な暮らしを制限したのでは?とも想像しています。 衣服も派手なものは禁じ、中国では喪を意味する白として、襟合わせも右前にすることを許さなかったとすれば、古事記などによく見られる古代の衣装とも合致してきます。 極端な考えに思われるかもしれませんが、戦後アメリカは日本を管理下に置きましたし、ゼロ戦を作り出した技術力を恐れて、国産航空機の開発も禁じました。 恐怖を抱くと人は、相手に圧力をかけて、発展する自由をも奪うものなのです。 弥生時代の後期に向かうにつれ、中国の情勢は混沌としていきます。 もしかしたらお家の方が大変になり、中国の目が行き届かなくなった隙をついて、倭人が結束することで訪れたのが古墳時代だったのかもしれません。 つまり、弥生時代から古墳時代への変遷は、大陸の縛りからの脱却の瞬間だった。 倭人の末裔としての希望的観測ではありますが、そのように今は考えています。

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