若い夫婦は、どこかへ出かけるとなると必ず壹与も誘った。 別に断る理由も無いので、いつも彼らの後についてゆく壹与であったが、なぜか仲睦まじい月読達の姿を目の当たりにすると、少女の胸はちくちくと痛んだ。 それは恋と呼ぶにはあまりに幼稚な感情であったが、彼女にとっては生まれて初めて味わう得体の知れぬ切なさであった。
この回より、舞台は八年後に移ります。 月読は二十二歳となり、妻も迎えています。 今回はそんな彼へ対して、十三歳になった壹与が抱く、淡い恋心をテーマにしています。 月読と壹与は、叔父と姪の関係です。 しかし、当時は兄妹であっても、腹違いであれば結婚することができました。 当然、それより血が遠くなる叔父と姪は恋愛の対象であったでしょう。 その一方で、同母兄妹の結婚は禁忌とされていました。 このあたりの古代の結婚事情に関しては、ブログでも語らせていただいています。 興味をお持ちいただければ、そちらの方も合わせてご覧下さい。 「妄想の餌」より「古代における結婚事情」