今回は、小説には関係ありませんが、音楽について語ってみようかなと思います。
と言っても、私は幼い頃ピアノを習ったものの、バイエル(ピアノの初等教本)さえ終われずやめたので、語れるほどの知識もありませんが……。
まあ、自分の趣向というか、好みの音楽について、ちょっと勝手に語ってみようかなと。
もし、お暇でしたらお付き合いいただければ嬉しいです。
私の亡くなった父は、若い頃、市の吹奏楽団に入っていたとかで、音楽が好きで、休日には早朝から大音響でクラッシックのレコードをかけていました。
私の引っ越す前の実家は、山の中にぽつんと一軒だけ建っていたのですが、おそらくその立地を選んだ理由には、好きなだけ音楽を聴くためというのもあったのでしょう。
音楽を聴くための居間は、音が均等に反響するようにと、壁が屏風状に作られ、当時(1980年前後)では珍しく、サラウンドシステムが備えられているという懲りよう。
自然と私も、幼い頃からクラッシック音楽が耳に馴染んでいたのだと思います。
ビバルディ、チャイコフスキー、モーツアルト、ベートーベン、バッハ……etc。
父が聴くのは、基本的にオーソドックスなクラッシックをオーケストラが演奏しているものでした。
でもそんな父が、ある日、衝撃的な音楽を聴き始めたのです。
メロディーには馴染みがありました。
でも、それを奏でる音がまったく聞いた事の無い未知のもので、私は幼心に凄まじい衝撃を受けたことを覚えています。
それは、シンセサイザー奏者、富田勲さんの「展覧会の絵」でした。
「展覧会の絵」は、ムソルグスキーという人が作曲したもとはピアノ組曲です。
それを富田さんがシンセサイザーで演奏したレコードだったのです。
賛美歌のようなコーラスとチェンバロが奏でる、印象的なオープニング。
それから次々と繰り広げられる、アコースティックにはあり得ない斬新な音の世界。
今の若い人たちには珍しくもない音かもしれませんが、当時ではかなり革新的で世界が驚いたと言っても過言ではなかったのです。
以来、私はシンセサイザーの音に敏感に反応するようになりました。
富田さんをパイオニアとして、それ以降、坂本龍一さんがメンバーにいたYMOやC-C-Bといったテクノポップスが登場したり、喜多郎さん作曲の「シルクロード」のテーマ等の誕生によって、シンセが新しい音源として市民権を得るようになっていきました。
シンセの持つ、神秘的で宇宙的な広がりのある魅力。
必然的にSF映画のテーマ曲などにも多用されていて、「未知との遭遇」「2001年宇宙の旅」のテーマなどは、中でもその魅力を最大限に引き出していたような気がします。
日本でも劇場アニメ「幻魔大戦」のサントラなどは、物語が私も大好きな超能力ものだったこともあり、イントロを聴いただけでワクワクしました。
話が少し逸れますが、当時はまだ、邦画に海外アーティストが楽曲を提供するというのも珍しく、この「幻魔大戦」の主題歌、「光の天使」(ローズマリーバトラー)を告知CMで聴いたときは、テレビの前に釘付けになりました。
同じ頃公開された「里見八犬伝」でジョンオバニオンが歌った「Legend Of Eight Samurai – Satomi Hakken Den」も素敵でした。
映画といえば、「銀河鉄道999」の「THE GALAXY EXPRESS 999」(ゴダイゴ)も良かったなあ。
そして、ゴダイゴといえば、「ガンダーラ」が……と、とりとめなく脱線しそうなので、この辺で自重。
そんな、クラッシックをベースとしたシンセ音楽に夢中になった私が、まさに中2病全盛期に出会ったアーティストが、「TMネットワーク」でした。
幼い頃からヴァイオリンを習っていたという小室哲哉さんが作る、クラッシックの旋律を持ちながら、自在に変調するメロディーとシンセ音。
小室みつ子さんの、SFや童話のようなファンタジックな世界に引き込む、ストーリー性のある歌詞。
そんな二人の天才の生み出す曲を見事に歌いこなす、宇都宮隆さんの存在感のある歌声。
「Children Of The New Century」や「BEYOND THE TIME」なんて、今の若い人たちが聴いてもカッコいいと思うけどなあ。
個人的には「RESISTANCE」も好き!(もういいって?)
中でも「human system」を初めて聴いたときは本当に驚きました。
イントロが「トルコ行進曲」なんですよ!
しかも、歌詞の内容が、「互いに虚無感を抱えた少年と少女が、出会う事なく街角ですれ違っていく」というせつないもの。
中2病絶賛発症中の私には、たまりませんでした。
彼らを好きになり過ぎた私は、とうとう、バイト代をはたいて、小室さんが当時使っていたシンセサイザーを無謀にも購入しました。(YAMAHA SY77)
最初に書いたように、楽譜も読めない私です。
何に使うんだという感じなのですが、それでも指で音を探りながら、曲をいくつか作ったりしました。
私の詩集「恋詩〜こいうた〜」の中のいくつかは、実は当時作った曲の歌詞だったりします。
中でも「月夜の海で」は、イントロに小室さんのアイデアを拝借して、「ユーモレスク」というクラッシック曲の一節をアレンジして使用しました。
「Fight to self」は、「Get Wild」と「self control」の影響を受けた最もTMぽい曲です。
「夢でもいいから」は、当時完全に恋していた小室さんを想って書いた歌詞だったり……(恥)
音楽の基礎のない私のアレンジはチャチなものでしたけど、自分ひとりでベースからパーカッションまで、その気があればオーケストラだって演奏できるというシンセは、それからしばらく私の最高のおもちゃになりました。
自分で撮影してきたビデオ(風景)に曲を挿入したり、学校のスタジオを借りて恥ずかしながら自分で歌ってレコーディングしたこともあります。
やがて、結婚が決まり、いつしかシンセを触る機会も減っていた私が、処分しようかどうしようかと悩んでると、友人のみらんちゃんが知り合いに買い取りたいという人がいると声を掛けてくれました。
そこで、ミュージシャンであるというその方に格安でお譲りする代わりに、記念に自分の曲をアレンジしていただくことをお願いすることができたのです。
不覚にも私は、それが入ったカセットテープを無くしてしまっていたのですが、最近、みらんちゃんからそのテープを借してもらうことができました。
約20年振りに聴いたそれは……想像以上に良かったです。(自我自賛?)
いえいえ、曲がというより、アレンジが素晴らしかったのです。
そして、みらんちゃんの初々しく透明感がある若い声。
皆様にもお聞かせしたいのですが、そのミュージシャンの方とは今交流が無いので、許可を戴けないため残念!
でも、本当に一生の宝物です。
ここまで、取り留めなく語ってきましたが、結局、私がミーハーだという暴露になっただけのような……?
最近、昔を思いだして、この頃好きだった曲をネットで聴いたりして、ちょっと再炎中。
いつか、神秘的なシンセ音楽が似合うようなSFを書いてみたいなあと、思ったりしながら、まだ古代中国から抜け出せない長緒でした。