「ねえ牛利、あの人はなぜ、いつもあの女の子のそばにいてあげないのかな」
宮廷の庭を男鹿と歩いていた牛利は、初めて耳にした少年の声に思わず振り返った。 少年の視線は、少し離れた場所で向かい合う美しい少年と、幼い少女に向けられていた。
「あの子は、あんなにあの人がいなくなると寂しそうなのに。可哀想だよ」
「……」
「私なら、ずっとそばにいて欲しいって言われたら、そうしてあげるのに」 第二話 あたえられし者
こちらのお話も、残すところあと二話となりました。 完結後は、「一日一話」はしばらくお休みさせていただき、その後ラスト・シャーマン外伝「花蓮〜ファーレン〜」を連載させていただくつもりでいます。 このお話は、いわゆる三国時代の中国を舞台にしたお話です。 卑弥呼に「親魏倭王」の封号と金印を送った魏の皇帝「曹芳(そうほう)」。 わずか八歳で即位した彼は、不名誉な理由により二十三歳で廃位され、都を追われます。 月読たちから見ればとてつもない大国であった魏の国ですが、この頃は斜陽の時代にありました。 巫女の占いが中心の政(まつりごと)から、人が考え動かす朝廷へ。 新たな国づくりを始めたばかりの倭国と、成熟を通り越し、滅亡へと向かいつつある魏。 朝廷内で孤立していく皇帝と、倭国からやって来た青年との交流を通して、両国の違いを浮き彫りにしていければと思いながら書き進めた作品です。 引き続きお付き合いいただければ幸いです。