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  • 執筆者の写真長緒 鬼無里

【一日一話】「ラスト・シャーマン」第四章 第五話 別れのかたち

「皆、お前を応援している。必ず目的を果たして帰って来い」

 これまで見せたことのない、穏やかな笑みを浮かべてそう言う建(たける)に、男鹿も微笑んで頭を下げた。

「ありがとうございます」

「ぐずぐずしていると、壹与様(あのかた)を誰かが妻にしてしまうぞ。まあ、だとすれば、おそらくそれは私だろうがな」

この作品を書いている間に、不思議な偶然に何度もあったと以前少し触れました。

高校生の頃に何気なく主人公にした「月読」が、海人族(あまぞく)と呼ばれる人々が信仰する神であったり、執筆中に金環日食を目撃したり、その日食が卑弥呼の時代にもあったとの記事を見つけたり……。

見方によってはこじつけとも取れるかもしれませんが、私としては様々な偶然が重なったおかげで、この物語を書けたような気がしています。

そんな偶然のひとつに、熊襲国の建(たける)の衣装があります。

執筆中、親友の「なな色みらん」ちゃんは、感想を聞かせてくれるだけでなく、キャラクターのイメージイラストも描いて応援してくれました。

頭に浮かんだイメージを彼女に伝えるために、私も長年封印していたイラストを描き始めたのです。

私のモノクロの鉛筆画と拙い説明をもとに、彼女はいつも美しく色付けされた絵を描いてくれました。

そんな中、私の頭に浮かんだ建の衣装は、「黒がベースで、裾や襟周りに赤い大胆な幾何学模様がある」というものでした。

この作品の中には、必然的に箸墓古墳が出てきますが、以前の私は古墳自体に大して興味がなく、知識もほとんどありませんでした。

でも古墳好きの皆さんとお付き合いさせていただくようになり、最近になってようやく「装飾古墳」のことを知ったのです。

鮮やかな赤と黒で彩られた石室等の写真を目にした瞬間、「建の衣装だ」と興奮を覚え、思わず身震いがしました。

熊襲は熊本を中心とした南九州にあったとされる国で、装飾古墳は特に熊本で多く見られるとのこと。

もしかしたら、どこかで無意識のうちに目にしていて、それが頭に残っていたのかもしれません。

でも、少なくとも私にとっては大きな驚きだったのです。

今は「装飾古墳」のデザイン性に夢中で、いつかは現地に行って本物を目にしてみたいと思っています。

なな色みらん画 建

長緒画 建

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