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  • 執筆者の写真長緒 鬼無里

【一日一話】「ラスト・シャーマン」第三章 第六話 熊襲兄弟

「お前達は、呉の人間なのか?」

 しばらく無言の時間が過ぎ、不意に壹与が建(たける)に問うた。  見た目で倭と呉の人間を区別するのは難しいが、彼女は彼に同じ倭人の持つ空気のようなものを感じていた。

「いや。我々は倭人だ。こう見えても筑紫島の西南にある熊襲という国の王族の者だ。今は呉の下僕に成り下がっているがな。あれは私の弟だ」

第五話 現世(うつつよ) すぐにピンとこられた方もいらっしゃるかと思いますが、熊襲兄弟のモデルは古事記の中でヤマト王権に抵抗し、ヤマトタケルに討たれたと記されている熊襲の支配者たちです。 熊襲は、現在の熊本県から鹿児島県にまたがる地域にあったとされる国で、その名には勇猛なとか猛々しいという意味があるようです。 その名の通り彼らの種族は、荒々しく勇猛な民として周辺諸国からも一目置かれており、ヤマト王権に臣従後は、「隼人」として仕えたとの説もあります。 実は、ヤマトタケルのタケルという名は、熊襲タケルが殺される直前、自分より強い者であると認めて譲ったものだとか。 一般的には、イサオが兄でタケルが弟ということになっていますが、このお話の中では逆になっています。 これには特に意味はなく、単に私が「タケル」という名前の響きが好きで、登場頻度を高くしたかったから……だったりします。(笑)

イラスト/なな色みらん

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