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  • 執筆者の写真長緒 鬼無里

【一日一話】「ラスト・シャーマン」第二章 第七話 戦の足音

男鹿は敵の隙を突いて一人の男の脇腹に剣を差し込み、一気に切り裂いた。 初めて感じる肉や骨を切る鈍い感触と共に血が飛び散り、彼の顔や衣を赤く染めた。 幼い頃から牛利から剣術を刷り込まれていたせいか、頭で考えるより先に体が動いた。 第七話 戦の足音 この物語中の倭国では、銅製の武器が一般的で、鉄を有しているかどうかが国力を左右しています。 そのため大陸から近く、原料や技術を手に入れやすい環境にあった狗奴国や出雲が勢力を伸ばしていたという構図になっています。 実を言うとこれは、私の中にあったイメージをもとに書いたもので、深く調べた結果ではありません。 後になって、鉄と銅はほぼ同時期に国内にもたらされたとか、銅は武器として実用性が低かったなど、否定するような内容の資料を目にしたりしましたが、最初に抱いたイメージが大きく揺らぐことはありませんでした。

「だって、頭に浮かんだイメージがこうだったんだもん」

開き直りかもしれませんが、たとえ事実と異なっていたとしても、私の中に見えた世界ではこれが真実だったのだから仕方がない(笑) このことに限らず、この物語の中で書かれている古代の様子の多くは、資料に基づいたものではなく想像(妄想?)の世界です。 でも不思議なことに、時折、その想像の世界と知らなかったはずの事実が一致することがあります。 そんな時は、ちょっとオカルト的な発想になりますが「何かに書かされている」と思えてなりません。 銅剣に関してもさらに調べてみると、古代中国では製鉄技術が未熟な反面、製銅技術が異様に高かったため、銅製の武器が主流の時代があったそうです。 その後、製鉄技術が上がるにつれて鉄が使われ始め、黄金に近い輝きを放つ銅は祭事用へと変貌していった……。 弥生人は配合物によって、銅鐸の輝きや強度を自在に操っていたとの話もありますし、古代中国と同じ歴史を日本もたどっていたとしたら……と、都合よく解釈したりしています。

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