日々続く生きるか死ぬかの戦いの中で、牛利は弥鈴(みすず)に再会できる日だけを心の支えに生きていた。
「ここで死ぬ訳にはいかぬ」
その思いが、時には彼を凶暴な殺人鬼に変貌させ、数えきれない数の敵を殺めてきたのだ。
第三話 守れなかったもの 今回は、牛利がなぜ主である難升米を裏切り、月読を支えるようになったのか、その経緯が語られます。 先日も少し触れさせていただきましたが、牛利は「魏志倭人伝」の中で副使として難升米とともに魏に渡った者と書かれています。 同書に彼の名は「都市牛利(つしごり)」とありますが、こちらも呼びやすさと覚えやすさを優先して「牛利(ぎゅうり)」とさせていただきました。 彼の出自や帰国後どのような人生を送ったのかは定かではありませんし、当然のことながら、難升米を裏切ったとの記述もありません。 人物像や生い立ちなどもすべて架空のものですが、「こんな人が生きていたかもしれない」と一瞬でも感じていただければ、作家冥利に尽きます。