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  • 執筆者の写真長緒 鬼無里

【一日一話】「ラスト・シャーマン」第二章 第二話 神の血

「美しいな……」

 月読は思わず立ち止まり、朝霧に煙る眼下の光景に感嘆の声を上げた。  彼らの背後からゆっくりと太陽の光が注ぎ始め、山並みが広大な大地に長い影を描き始めた。  それと同時に、平野の北側に静かに横たわる巨大な湖と、その向こうに広がる海が、朝日を水面の光に替えて輝き始めた。  もう、漁師達は出港する時刻のようだ。  湖の至る所で、大小の船の白い帆がゆっくりと沖を目指して動き始める様子が見て取れた。  朝餉(あさげ)の支度も始まったのか、処々点在する集落の住居からは竃(かまど)の煙も立ち昇り始めた。 第二話 神の血 邪馬台国を追われた月読は、隣国の河内国へ向かいます。 彼らが峠に差し掛かった時、ちょうど朝日が昇り始め、眼下に広大な景色が浮かび上がってきます。 月読が立っているのは、生駒山のあたりでしょうか。 当時、大阪平野は河内湖と呼ばれる湖で、上町台地は湖と海を隔てるように、半島状に突き出していました。 この物語の中で、河内国の中心地は現在の堺市あたりにあったと仮定しています。 瀬戸内海を航行してきた内外の船は一旦河内湖に入り、渡航者たちは、そこから川か陸路を使って邪馬台国を目指します。 いわば邪馬台国への玄関口であったこの国は、人と物が盛んに行き交い、大いに賑わっていたと想像しています。

古代の大阪市近郊の地図。大阪平野は湖でした。

なな色みらんちゃんが描いてくれた河内国王。 異国文化が行き交うこの国の王は、大陸かぶれの洒落男。 壹与の父でもある彼は、人情に厚く、涙もろい一面も持ち合わせています。

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