「何の恨みがあって……」
憎々しげに月読は、難升米を睨みつけた。
「恨み? とんでもない。そもそもお前達姉弟が、私から権力を奪ったのではないか。卑弥呼は私の父王上筒之大王の死を機に大王の座におさまり、継承権を持つ私を魏へ送った。本来なら大王の子である私が継ぐはずだった王の座を取り戻したまでだ!」 第四話 偽りの告白 難升米は、魏志倭人伝に記載されている卑弥呼が魏に送った使者です。 「なんしょうめ」とも読むようですが、覚えやすく読みやすいように拙作では「なしめ」としました。 本作ではあまりいいイメージではない彼ですが、魏の皇帝から旅の労をねぎらい、銀印を賜ったともあるので、国のために尽力してくれた人物だったのでしょう。 物語の構成上悪役も必要なので、難升米さん、ごめんなさい!! ちなみに、牛利も難升米に同行した者として書かれています。