「月読、また行っちゃうの?」 壹与は悲しみを満面に映して、月読を見上げた。 「姉上がお呼びなんだ。わかるね。壹与」 返事をする代わりに壹与は侍女の背後に隠れた。 まだ五つの幼子に政治の重要性などわかるはずあるまい。 しかも実の母を病で亡くしてまだ間がないのだ。
父である隣国の王が新しい妃を迎えたことで行き場を無くしていた壹与を、霊能力があると感じた卑弥呼が引き取ったのだが、可愛がる様子は全く無い。 知らぬ土地で自分以外に頼る者のない壹与を、月読はできるだけ一人にはしたくなかった。
魏志倭人伝の中で、壹与は卑弥呼の親族としか記されていません。
拙作では、彼女は卑弥呼の姉と河内国王との間に生まれた娘と設定しています。