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  • 執筆者の写真長緒 鬼無里

夢を買いそびれたお話 パート1

数ヶ月前、ある方から「某社の資料をネットで請求しようとしたが、上手くいかなかったから代わりに取り寄せて」と依頼されました。

その某社というのは、自費出版で有名な出版社で(後から知った)、ネットで注文してから間もなく、分厚い資料が我が家に届きました。

依頼された方から「参考に見ていいよ」と言われていたので、ひとまず開封して拝見させていただいたのですが、なかなか高級感があり、すっきりと読みやすくまとめられた資料でした。

ところが、どれだけ見直してみても、費用の目安がまったく見当たりません。

でもそれは、ページ数や仕様によって大きく異なることだろうから、致し方ないかなと思いました。

資料が到着してから数日後、この出版社の方から電話をいただきました。

電話を下さったのは男性の方ですが、べたべたとした営業口調でもなく、落ち着いた雰囲気の好感の持てる方でした。

資料請求時のアンケート欄に出版したい作品の状態を問う項目があり、私は今すぐ考えている訳ではないという意思表示を込めて「執筆中」と答えていたのですが、話はそこから始まりました。

「今、原稿用紙で何枚分くらい書けていますか?」

「う〜ん、600枚くらいでしょうか」←ラスト・シャーマンの文字数を思い浮かべて

「600枚?! 超大作ですね。最終的には何枚くらいになりそうですか?」

「800…とか?(笑)」

『はははははは』←お互い乾いた笑い

「普通、枚数はどれくらいのものなんですか?」←私

「そうですね。300〜500枚くらいでしょうか。本代が高くなってしまいますしね。ご本人では削りにくいかと思いますが、プロが見てその辺は編集させていただきますよ」

「ざっくり、半分ですか…」

同人本作成に向けて、内容を削りたくないからと二段組みのレイアウトにした私からすれば、この時点で殆ど興味が無くなりました。

でも、いくらくらい掛かるかはやっぱり気になる。

「ところで、費用について書かれた部分を見つけることができなかったのですが」

「ああ、それは仕様によって異なりますからね」

そこで、一般的なケースでの概算を伺ってみました。

初版は1000部作成。

費用は200〜300万円が相場。この中には、書籍代はもちろん、編集費や完成後の販売促進費も含まれています。

希望により、200部までは本人に。30部は営業用に出版社で保管。残りを書店で販売します。

初版の印税は2%。増版は出版社持ち。二版での印税は6%。三版以降は8%となります。

仮に300万で作ったとして、手元に200冊残して、残り770部が完売したと仮定してみます。

1冊1000円で販売されたとして、その2%は20円×770冊=15400円。

単純計算でそれだけが手元に戻る計算です。

これを私は法外な価格だとは思いませんでした。

今、自分で編集をしていてその大変さはよくわかっているし、それをプロがしてくれるのですから、それなりに費用がかかるのは当然です。

しかも、その後の販売ルートなんて、一般人が今日明日で簡単に開拓できるものではありません。

少なくともこの出版社の書籍は書店でも普通に並んでいますし、メディアにも力を入れているので、そのメリットを考えれば安いくらいかもしれません。

ただし、こちらの出版社では個人出版と一般出版の二つの出版形式をとっていらして、書店で販売される一般出版をするには、それに値する内容かどうかを判断するための審査があるとのことでした。

「ところで、小説の内容はどんなものなんですか?」

「え? え〜っと、一応歴史ものです」

「歴史もの? いや、こう言ってはなんですが、女性で歴史ものを書かれるというのは少し珍しいですね。どういった時代のものですか?」

「え〜っと…邪馬台国とか?(笑)」

「それは興味がある! 途中でもいいので、ぜひ一度読ませて下さい!」

「ははは、今改稿中なので、ある程度形になってきましたら〜」

と言って、この日は逃げるように電話を切りました。

続く

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